百鬼一族 血脈の書

百鬼一族 血脈の書

当サイトは俺の屍を越えてゆけ リメイクのプレイ日記となります。

小話

優しい人

「─────どうして笑える。無理に笑っているなら、やめてくれ」 冷え切った声と難しい顔で、樒は山茶花に問いかけた。 ここは紅蓮の祠から京へと帰る道中の川辺。恒春達が焚き火に使えそうな木々を拾いに行き、現在自分は樒と二人きり。 腰を落ち着けて談笑を…

眠りつく日 後編

「呪いが解けなかった事実や、朱点童子の真実……。 あの日の起きた全ての事柄を、芹はどう思っているの?」 「……僕がどう思ってるか、かあ」 「ええ」 「僕が、か……うーん、そうだなあ….」 質問をどう感じているかじっと観察してみるが、これと言って変わった…

眠りつく日 前編

『─────こうなる可能性は、伝えれられてたから分かってた。だから正直、解呪しなくてもそこまで落ち込みはしなかったよ。……少しも動揺してない、なんて言えない心境でもあるけどさ。 解けなかったせいで兄さんは灰になったし、家が暗い雰囲気になっちゃった…

そういうもの

「癪に障ります。 好き放題している彼女と、それを野放しにしている貴方様が」 突然の芹の言葉。それを受け和やかに賑わっていたはずの風呂場は、樒達の僅かな動作で起こる湯船の水音だけが、静かにこの場に響くのだった。 いつも通り日課の鍛錬をこなすと、寒…

とても幸せでした

「かえってきた! 梔子の兄御、皆がかえってきたぞ!」 「お、ほんとかー?」 「うむ! その目でしかとたしかめよ!」 ソテツの言葉を受け、三人は弾かれた様に門の外へと顔を向けた。舞い落ちる粉雪の中、確かに此方へ向かってくる見慣れた姿が視界に映る。…

遺恨怨恨ラプソディ

見上げた先に映るのは朱点童子だったモノと、その中から出て来た見知った存在。死闘の末に築き上げた亡骸から出てきた存在こと黄川人は、ようやく外に出られて興奮からなのか、ペラペラと忙しなく好き勝手に口を動かしていた。 眼下に居る己達を嘲るが如く一…

そうだ 大江山、行こう

────ここのところ、芥子の様子が変だ。 「けーしーお前の息子、訓練頑張ってるぜー? しっかり真面目に取り組んでる。さすが芥子の息子だよなー….って、あれ」 まだまだ太陽の日差しが眩しいある日のこと。樒の命で訓練をしていた梔子は、疲労が見えてきた芹…

あたたかい かみさま

りいんと、視覚を閉じた暗闇の世界で耳から脳髄、爪の先まで響きわたる鈴の音。この音は、イツ花言っていた合図の音だ。己の前で舞い踊っていた彼女の気配が消え、肌に触れる空気はじわりと刺す暑さから心地の良いものへと変化していった。 一つ、二つ、三つ…

子狐の世界

────幼い僕の拙い記憶。僕が初めて綺麗だと思ったものは、視界全てを埋めてしまいそうな程に広がった、たわわに実った黄金色の稲穂だった。 「んん、芹だから……せっちゃん? セリー? どっちがいい?」 「セリー、がいいかな。 ちゃん付けだと、樒様とかぶっ…

それでも3

七月下旬、伽羅の自室にて。 茹だるような暑さが樒や伽羅達の肌に纏わりつく。日差しの当たらない室内にでも、暑いことには変わりはない。弱っている母にはなおのこと辛いだろう、樒は横たわって眠る伽羅にゆっくりと扇子を扇いで風を送る。そよそよとした風…

それでも 2

七月中旬、風鈴の音だけが涼しげな広間前の縁側にて。 縁側には右から順に山茶花、伽羅、恒春。三人して木桶にたっぷりと満たした水に足を浸し、各自で涼を取りながら目の前の光景を眺めていた。 「あー……あっつい。暑いだけど、凄く平和。良いことだよねー……

それでも 1

七月初頭、庭にある大きな梅の木の真下にて。 「本当に大丈夫なの?」 「大丈夫だって、芥子は心配し過ぎ。 そう簡単に人は死なない死なない」 「そう簡単に死ぬ呪いに掛かっているから心配になってるのよ、こっちは……。 ……明日には私は天界に行くわ。 だか…

日常小ネタ2本

男はつらいよ、野郎二人のダベリング 〜思春期心を添えて編~ 「あーーーー……暇だ。こーしゅん面白いことしてくれ。 はい3、2、1!」 「は?する訳ないでしょ馬鹿じゃないの?」 「えー、んだよ。つれねぇなー」 「兄さんと違ってそこまで暇してないから。テ…

伽羅の懐古 2 下

『────あれ、どうしたの? ああ、この間は中途半端なところで話を終えちゃったもんね。そっか、気になってたんだね。じゃあ今日はあの後の、梔子と山茶花の二人とした話について語ろうかな。 そうだ。あたしはもう食べれないから、残りの秘蔵のお菓子もあげ…

伽羅の懐古  2  上

『おはよう、今日は昨日より調子がいい感じなんだ。だから久しぶりに出かけてもいい?え、駄目?……雨が降っているから?……どうしても駄目なの? ……残念、街に出かけたいなーって思っていたのに。はいはい、そんなに言わなくても分かってるって。今日は大人し…

伽羅の懐古  1

「……それじゃあ、頼んだよ相棒」 「おう、任せとけ相棒」 にやりと口角をあげて、不敵に笑い合う。あたし達は拳を突き合わせて、固めた決意を示す。お互いに相手のことはよく理解している。だからこそあたし達は、お互いが心の内でどれだけ不安に思っている…

冬が終わると何が来る?

12月は終わった。大江山の門は閉じた。あたしの年齢を考えると、また開く姿を見ることはないだろう。百鬼伽羅こと百鬼浅葱、1歳4ヶ月。鹿子姉と梔子も、きっとあたしと同じ、間に合わずに死んでいく。芥子はもしかしたら生き残れるかも?まだ6ヶ月だし。恒春…

浅葱と延珠

しとしと、しとしと。縁側から覗く京の街は、雨のせいで暗くどんよりと重たい。座って低い視線で眺める景色は雨だからこんなにも嫌な気持ちにさせるのだろうか。それとも、鬼達によって壊滅的になっているから活気がないのだろうか。少なくとも、今の俺には…