百鬼一族 血脈の書

百鬼一族 血脈の書

当サイトは俺の屍を越えてゆけ リメイクのプレイ日記となります。

独自設定まとめ

百鬼一族  独自設定まとめ 

 

この記事は当一族の独自設定についてまとめた物です。よく出す独自設定からちょっとした独自設定まで、それら全てをこちらに書き記しています。内容が内容なだけにネタバレ要素を含んでいるかも知れません、ご注意ください。

ただし、まだ百鬼一族は始まったばかりですので、今後独自設定が増えることがあるやも知れません。その度にこちらに更新していくつもりです。

もしもこれも独自設定では?  この設定の詳しい説明が欲しい! 等とそのようなご要望がありましたら、お気軽にこのブログやTwitterでお尋ね下さい。

 


目次

・討伐時の一月の流れ

・交神方法

・百鬼一族の成長速度

 


【討伐月の流れ】

だいたいどの一族の面子の時でも、百鬼家では月の初め、もしくは数日後には迷宮へと出陣しています。ただし討伐月に討伐隊メンバーの子供が来た場合等、その時は少しの間子供と過ごしてから出陣するケースも、もしかしたら中にはあるやも知れません。

迷宮に到着してからのすることはゲーム通りです。今のところ設定を生やす予定は無い、と、思いたいです……←


独自設定はここから。当一族では討伐に行くと何をしたか、何を入手したか等の報告書を書いて、当主に提出します。そして当主はその報告書を見て一月の記録を付けたりまとめたりして、今後の予定を考えていきます。

報告書をいつも誰が書いているのか。それは討伐隊の有志の人間が書いたり、交代制で書くことが多いでしょう。しかし初陣の子やまだ若い一族の場合は、成長したら討伐時の現在は若い子でも将来書く機会が巡ってくるかも知れないので、他のメンバーに指導されて若い一族が書いたりします。

大まかな流れは下記の通りです。


※簡単な討伐後にすることの流れ

数日、数週間に渡っての討伐→帰還しながら報告書の原案作り→帰還後報告書を当主に提出

→報告書を見て当主が大まかに一月の記録に記す→記録、報告書どちらも厳重に保管

 


【交神方法】

このプレイ記録内での交神方法は大きく二つに分けられます。

一つは人間と同じように閨を共にする方法、もう一つは神と一族の力を混ぜ合わせる方法です。


混ぜ合わせ方はその神々によって違います。その神の力に満たされている住処に一月共に居ることで、一族の素養と神の素養を緩やかに混じり合わせる場合や、交神相手の神を象徴する様な物に互いの力を入れ混ぜる場合等……やり方は本当にその神次第です。

どちらを行うかは、交神するその神によって違うでしょう。

 


【百鬼一族の成長速度】

個々人によって成長速度に差はありますが、当一族の大まかな成長速度は下記の表のようになっています。

また人によっては心体の成長スピードの早い3~6歳時に体や心の成長について行けず、何かしらの不調が起きることもあります。

例)反抗期、食欲減退等

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それでも3

七月下旬、伽羅の自室にて。


茹だるような暑さが樒や伽羅達の肌に纏わりつく。日差しの当たらない室内にでも、暑いことには変わりはない。弱っている母にはなおのこと辛いだろう、樒は横たわって眠る伽羅にゆっくりと扇子を扇いで風を送る。そよそよとした風を受けて、伽羅の長い髪が揺蕩うように動く姿が少し面白い。


「髪、長ぇから暑そー」

「そうだな。次に母さんが目を覚ましたら髪をまとめよう」

「だな、そうすっか」


樒と同じで伽羅の様子を見に来ていた梔子は伽羅の真横に座り、扇いで浮かぶ水色の一房を手に取りいじる。折角だから三つ編みにでもするか、何て呟く梔子を余所に樒は、母が風を不快に感じて起きてしまわないかと静かに様子を窺っていた。

今の所、嫌そうでも起きる気配も無いようだ。その姿に内心ほっ、と一息をつく。


眠っている伽羅の様子を見たり、部屋に勝手に置かせて貰っている迷宮の資料を見て議論したりと、各々自由に寛いでいた。


すると突如、りん、と澄んだ鈴の音が家全体に鳴り響く。

急に響く音でも、樒と梔子は何故なるか理由を分かっているため、どちらも驚かない。これは遠く離れにある交神の間で、この世と天界が繋がった際に生じる音。この音が鳴ったということは、つまり。


「….芥子、帰って来た?」

「お、伽羅おはよ」


家の何処に居ようとも、毎回繋がる度にこの鈴の音は大きく響く。そのせいで、眠っていた伽羅が目を覚ましてしまった。

朝飲む分の漢方を飲んで、少し調子が落ち着いて穏やかに寝ていたというのに….毎度毎度、こうも音を出さないと駄目なのだろうか。樒は心中で悪態を吐く。


繋がったということは、よっぽどのことでは無い限り伽羅の言う通り芥子が戻って来たのだろう。母としたらしい約束通り、まだ月が終わるには早い日にちだと言うのに、急いで帰って来たようだ。


「あー….ぐっすり眠ってたせいで起きるのがちょっとだるい。樒ー手ぇ貸してー」

「分かった」

「寝起きのせいで声がらがらだぜ? 相棒」

「分かってるから言わないでくれる? 相棒」


言うなと言わんばかりに渋い顔をする伽羅の手を取り体を支え、負担にならないように慎重に起き上がらせる。触れていると枯れ枝の如く細くなってしまった母の体がよく分かり、本当にもう灯火が切れる寸前だということを理解してしまう。


「伽羅、お前歩くのキツいだろ。俺が芥子を呼んでくるから、お前は樒と大人しく待ってろ」

「いいよ、自分で行く。それくらい自分でしたい」


そう言って立ち上がろうとして手に力を込める伽羅を、二人で手と肩を掴まえて無理矢理止める。ここ数日ほぼ寝たきりになっていた癖に、何故行けると思ったんだ。樒は伽羅を咎める気持ちで口を開く。


「もう少し自分の状態を理解してくれ。寝たきりだったのに急に歩ける訳ないだろう」

「え~……じゃあどっちか肩貸して。それならいいでしょ?」

「駄目だっての。それより芥子を連れてくる方が早いだろ?

ちょっと待って、…………ん?」


何処からかどたばたと大きな足音が聞こえる。その音は徐々に大きくなっており、おそらくこの伽羅の部屋近くまでやって来ているようだ。


「ねえ、足音近くなってきたよね?」

「そうだな。いったい誰が走ってんだよ」

「さあな。俺も分からない」


三人で不思議そうに顔を見合わせた後、梔子が誰が走っているのか確認する為に立ち上がった瞬間のこと。

足音の主が凄まじい早さで、風を入れるために僅かに開けていた襖の前に滑り込み勢いよく開け放った。


噂をすれば影、ということなのだろう。やってきたのは件の芥子だった。

走ったせいか彼女は肩で息をして短い髪を大きく揺らし、真っ直ぐに部屋の中央で布団の上にいる伽羅を見る。


「ッは、….伽羅‼︎」

「あ、芥子だ。おかえり」


心配と不安を浮かべて転がり込むように隣に駆け寄る芥子に、まるでちょっと近所から帰ってきた人に言うような気軽さで、伽羅は気楽に微笑んだ。

約束を守りきった伽羅を見ても、芥子はますます顔に不安の色を浮かべていく。ずっと一緒いた樒達でさえ、伽羅が倒れてから尚のこと細く青白くなっているのを理解しているのだ。暫く会っていなかった芥子には、より以前との違いを感じていることだろう。


そんな顔をしている芥子を他所に、立ち上がっていた梔子は、襖を少し閉め直したら座り直す。樒はというと、この暑い中恐らく交神の間から走ってきたであろう芥子に水分補給をさせるため、伽羅が漢方を飲む用に備え付けていたお茶を勝手に注いでいた。


「交神はどうだった?  稲荷ノ狐次郎はどんな神だったの?」

「凄ぇ全速力で走ってきたなー、帰ってすぐに誰かに伽羅のこと聞いたのか?」

「交神は、一応、滞りなくしたわ。

伽羅のことはイツ花が、私がそろそろ帰ってくるって天界から聞いてたみたいで、それで交神の間前で、待っていてくれたの。だから、帰ってすぐに知れたのよ……」

「芥子、取り敢えずお茶を飲め。走って疲れただろう」

「ありがとう樒、助かるわ….」


樒がお茶を手渡すと、走ったせいで喉が渇いていたのか芥子は一気に飲み干した。はあ、と呼吸を整えてかいた汗を袖で拭ぐっている妹を労わりたいのか、伽羅は樒が床に置いて放置していた扇子を拝借し、扇いで風を起こす。


誰の物か分かっていて、かつ相手が何も言ってこないと分かっているからと勝手に物を借りるふてぶてしさは母に似たのか。等と樒は内心思ったのだった。


「ちょっとは落ち着いた?」

「それなりにね。でも焦っていたとはいえ、襖を傷ませてごめんなさい….。

梔子も、襖を閉めてくれてありがとう」

「おう、どーいたしまして」

「いいよ、気にしないで。それよりも早く帰ってきたってことは、交神相手と交渉出来たってことなの?」


風を吹かせながら、交神の話を聞きたいらしい伽羅は再度どうだったかと口にする。しかし芥子は伽羅の状態が気になるのか、手で制すと憂いを帯びた顔付きになり心配そうに眉を下げていた。


「それは後で話すし、報告書にもまとめるわ。

それより….、伽羅。血を吐いて倒れたって本当なの?」

「うん。もう終わりが近いんだろうね〜」


梔子の手によって好きなように髪を結ばれつつも、伽羅は何事も無いかの如く軽く頷く。静かにこの場を観察していた樒には、いつも通りの伽羅と梔子と比べ、ますます悲しげに目を伏せる三人の様子がありありと分かった。


「おっし三つ編み完成! 伽羅、髪紐は何色がいいとかあるか?」

「お任せで〜」

「はいよ」

「….体調は、今はどうなのかしら」


こうやって流されることに慣れているのか、芥子は心配そうな面持ちのまま、お揃いの色合いな髪紐で盛り上がっている伽羅へ問いかける。


「死にかけだからね、若い頃に比べたら良くないよ。

でも、今は漢方が効いてるみたいで少しマシかな」

「そう、なのね……」

「ああもう、そんなに心配そうにしないでよ。

あ、そうだ。 恒春達も芥子が帰ってきていることに気づいているだろうし、顔を見せに行ったらどう?    みんな芥子の帰りを楽しみに待っているからね」

「あいつらは澄の訓練をしてる筈だから多分外だぜ。三人とも芥子の帰りを心待ちしてたんだ、ちょっと行ってきてもいいんじゃねぇの?

な、樒」

「……ああ」


にこにこ笑顔のまま自身も暑くなってきたのか、伽羅は自分にも扇子を扇ぎながら芥子に勧める。それを援護するかのように声をあげる梔子に巻き込まれ、樒も遅れながら適当に同意の言葉を吐いた。


これ以上不安を吐露しても、流されるし変えることの出来ないものだからどうしようもないと芥子は思ったのか、分かったとやけに素直に頷いて立ち上がる。


「そうね……あの子達も気になるから、一度顔を出してくるわ。

……でも、その前に。伽羅」

「ん?  なに?」


無理矢理に笑顔を作ったのか、くしゃりと困り眉で芥子は笑って、まだ言っていなかった言葉を紡ぐ。


「ただいま、伽羅。約束を果たせて、本当に良かった」

「….うん。おかえり、芥子。あたしも、約束を果たせて良かったよ」


何を言われるか想像ついておらず不思議そうにしていた伽羅は、その言葉を聞いて嬉しそうに笑った。

芥子はその返事を聞くと、直ぐに戻ってくると告げて部屋を去っていく。足音が遠のいて聞こえなくなってきた頃、伽羅が重力に従ってふっと後ろへと倒れる。


「は────良かった………!」

「  っ、母さん危ないだろうが!」

「布団があってもそれはやばいからな⁉︎」

「えー….これくらい大丈夫だって」


慌てて樒と梔子が支えたおかげで、伽羅が重力のままに倒れることは無かった。樒はばくばくと鳴る心臓の音を聞きながら、梔子と二人掛かりでそっと伽羅を布団へ寝かせる。

人の心臓を脅かした元凶の人物は危ないと思っていないのか、悪びれも無く布団の中で結ばれた髪を触っていた。


「二人共心配性過ぎ、枕があるんだから倒れても平気だって」

「もう若く無ぇってことをもっと自覚ようぜ?

今の伽羅の平気って言葉は信頼出来ねぇからな」

「右に同じく」

「あんた達さ、もっとあたしを信じよう⁇」


NOを突きつける樒たちに対して、伽羅はこれ見よがしにため息をついてみせた。

無理な要望をと樒が白い目をして伽羅の肩まで布団を掛けていると、同じ気持ちだったのか、人差し指を使って梔子が軽く彼女を小突く。


「あだっ!」

「ったく、相棒。帰ってきたばっかの芥子に心配かけたく無ぇのは分かるけど今は繕わなくていいんだよ。

せめておれや愛息子の前くらい、キツい時はキツいって言っていいんだぜ?」


真面目そうな顔つきで梔子は告げる。その言葉を受け、伽羅はバレていたのかとでも言いたげな微妙な顔をした。

いつも口端を吊り上げニヤけているような人間が偶にまともな顔をすると、こうもギャップが起きるものなのか。


そう面白く感じていると、伽羅は降参とばかりに両手を挙げた。本当は顔を作るのも苦しかったのだろうか、少し疲れが見える素の表情を浮かびあげる。


「……分かったよ。

ちょっと、少しだけ、芥子との約束を守れてほっとしてるからか力が抜けて入らないんだよね。そう言ってもらえると助かるよ」

「ああ。素直に教えてくれる方が有難いから、これからも苦しい時ははっきり教えてくれ。

それと母さん、疲れたんならまた眠ったらどうだ?  芥子が戻って来たら起こす」

「ううん、さっきまで充分眠ったから大丈夫。

それとあんた達、あたしの看病とかしなくていいんだよ。鍛錬や来月の予定についてとか、自分のことして良いんだからね?」

「そう言われると思って資料を勝手に置かせて貰ってるぜ?

この場でやるから問題無ぇよ」


文机の上に置いていた各迷宮の資料を梔子が取り出して見せつける。伽羅は資料を見てそう来たかと小さく笑うと、疲れたのかゆっくりと目を伏せた。

腹部で両手を重ね合わ、伽羅は悔いがないような穏やかで晴れやかな声色で呟き出す。


「芥子におかえりって言えたし、澄も恒春達が見てくれているし、樒も梔子も元気に生きてるし……もう後は死ぬだけだなあ」

「悔いは無いってやつか、相棒?」


少し屈んでかいた胡座に肘をつき、寂しさや悲しさもしくは親しみと慈しみ。さまざまな感情が混じったような、まだ大して生きていない樒には分からないごちゃ混ぜの表情を梔子は浮かべ、伽羅の目を覗き込んでいた。


(……成長して、梔子にとっての母みたいな人間がもし出来たら。俺にも何故梔子がこんな顔をしているか、分かるようになるのだろうか)


母と梔子が、相棒として互いを大切にしていることは知っている。

樒は別に、全く同じ関係性になれる人間が欲しいとは思ってはいない。

だが家族だけじゃない、それ以外の関係性や、大切に思い思われるような人間がもしが出来たら……。

そういうものに憧れる気持ちが、どんな時でも変わらずにお互いを大切にする母達を見ていたせいで、ほんの少しだけ、樒の中で芽生えていた。


伽羅は瞼を開けて目線だけで梔子を見ると、ううんと唸り出した。

どうやら、梔子の問いに異議があるらしい。


「う〜ん……実は一つあるんだよね、悔い。というか疑問?」

「え、なんだよ気になるな。

あるなら教えてくれ、そういうの遺して逝かれたら一生気になるんだよ。

ほら、樒もそう思わねぇ?」

「まあ……そうだな。言いたく無い内容でなければ、聞きたい」

「だろー?」


些細なことでも全てに気を配る気質な母のことだから、芥子の約束以外の生前整理はとっくに終わらせていたと樒は思っていた。だからこそ、残っている悔いが何なのか興味を引く。

同意見の梔子と急かしてみると、伽羅はその悔いもとい疑問が何なのか、その疑問の塊に向かって指をさして教えてくれた。


「ん」

「ん?」

「うん」

「うん……っていやうんじゃ無ぇよ。詳しい説明をくれ」


伽羅は梔子に向かって指をさす。

梔子は自身でも指し示してみると、伽羅は頷いて肯定した。疑問の内容が梔子とは、一体どういう意味なのだろうか。詳細を求める梔子に続くように、樒はこくりと頷いて即す。


常に肌身離さず左耳に付けている耳飾りを手で触れながら、伽羅は顔だけ横を向けて樒達を見る。


「樒は….ううん、あたしと梔子以外もう誰も知らないか。

相棒は初対面からあたしに懐いてたんだよ。それも物凄────く、満面の笑みで飛びついてきたくらいに。

梔子の勢いが強くて、一緒に居るのがとても居心地が良かったせいで、こんなになるまで聞きそびれちゃったんだよね。

ね、梔子はどうして最初からあたしに好意的だったの?」


あんたのことだから、大した理由じゃないのかも知れないけど。

それでも知りたいと言わんばかりに、伽羅は顔の横付近に座っているせいで近くにあった梔子の着物の裾を引く。


(確かに俺は、この二人が最初から仲が良かったかどうかは知らない。

興味が無かったせいもあるが、良好なのが当たり前だったせいで、最初からそういうものだったと思い込んでいた。

……駄目だな、こういう思い込みはよくない)


当たり前をそのまま受け入れる精神は、このややこしい一族の一員である限りよくないだろう。

なんて、樒が一人自身のあり方を改めている間にもその場の空気は動いていく。


答えを求められた梔子は、裾を掴んでいた伽羅の手を掴んで握り出す。その行動を不思議に思って顔を上げた伽羅に、梔子は柔らかい笑みを見せた。


「それはなあ相棒、お前がおれに取って無二の人間足り得ると見込んでいたからだよ。

伽羅はずっとおれの母さんから伽羅に紹介したのが初対面だと思ってるが、実は違うんだぜ?  知ってたか?」

「え、そうなの?  それは知らなかった……その前に会ってたっけ……?」


思い出せないのか目を彷徨わせる伽羅に、梔子は握っている手をおもむろに観察しながら続きを話す。


「いや、伽羅は知らなくて当然だと思うぜ。伽羅は延珠兄と二人で、沢山の資料を前に話し合ってたからな。

邪魔したらいけねぇと思って、その時は母さんとこっそりその場を去っていったんだよ。だから気づいてなくてもしょうがねぇよ」

「あー……確かにそんなことしていたような、していなかったような….

うん、ごめん。覚えてない」

「だろうな。

それでその時は先に荻兄達に紹介されに行って、母さんと二人で駄弁って時間潰して、そして最後に伽羅の元にまた行ったんだよ。

母さんと駄弁ってる時、色々と伽羅について話を聞いたりしてな?  

それを元に、おれはおれの中で伽羅はそういう人間足り得るんじゃねえのーって思うようになったんだ」

「えええ……何でそうなったの?  海蘭姉どんな話したらそうなるの……?」


うんうんと思い出して懐かしそうにしている梔子とは真逆に、伽羅は遠い目になっていた。どういう話をしたら一人の人間が無二の人物足り得ると思うのか、樒にも全く分からない。母がそんな目になるのも頷ける。


自分が何かしら口を出すと会話が終わるかも知れない。それは面白く無いと感じた樒は、いつも通り静かに聞き役に回った。


「どんな話、なあ……。

伽羅が自分の大切な姉の大切な子とだとか、自分達が不甲斐ないせいで子供のままで居させてあげれなかったとか、幼い頃から当主として家族を引っ張ろうと頑張っているとか……そんな感じのこと言ってたな」

「……零ヶ月で当主就任したことを気にされてる気はそれとなくしてたけど、まさか死の間際にその事実を知れるとは思ってなかったよ」

「あ、やっべそこはオフレコが良かったか?」

「いやもう聞いちゃったからどうしようもないよね⁇」


(重たい言葉が幾つか出ているが、この二人のが軽いせいでそうでもない気持ちにさせられる……)


伽羅は握っていない手で裏拳をしてツッコミを入れ、された梔子はカラカラと笑ってごめんと謝る。

ていうかいつまで握ってんの、悪い離すタイミング見失ってた。と言う会話をして、二人は繋いだままだった手を離した。

……普段から距離感を気にしないような二人だったせいで何も感じていなかったが、ずっと繋いだまま話していたのは中々に愉快な光景だったのでは、樒はそう思った。


「そんな感じの話を聞いてな?  

当時のおれと比べればそりゃデカいけど、それでもあんな小さい子供が家族を守る為に必死に勉強して重たい役目を背負うだなんて、すげぇヤツなんだなーってガキながら思ったんだよ。あいつは見所がありそうだって」

「伊予さん….伽羅の母さんがおれの母さんにとって大切だったように、梔子にとって伽羅がそうなったらいいねと言われてな。

それがトリガーだったのかさ、その言葉にまるで天啓を受けた気持ちになったんだ。まじで背中に雷でも落ちた感覚を覚えたんだよ」

「“そうなったら絶対楽しそうだ‼︎”   ……って。

それにおれの直感が、まだ喋ったことも無かったが伽羅とはそうなれると告げてな?  

だからおれは、おれの言い分に素直に従うことにしたんだよ」

「あ、あと思い違いされていたら嫌だから言うが、おれは親に言われたから仲良くしようとしたんじゃねぇよ。

伽羅が伽羅だったから仲良くなりたいと思ったし、なろうとしたんだ」

「んで、会って話してみたら結構ウマが合う人間だって知って。それでもっと仲良くなりてぇ遊びてぇって好きにやって思うがままにやって、それで何やかんや今に至る……ということだな」


要するに何かビビッと来たってことだ。親指を立てて良い笑顔で梔子は告げる。

軽いというか、素直というか、自由というか。隣で問いの答えを聞いていた樒は他人事故に、淡々と梔子のクセの強い話を表情筋を仕事させないで楽しく聞いていた。


この二人はある意味、正反対の気質を持っているのだろう。後々困らないように憂いが無いように、どんな物事も丁寧に根回しをして考察を重ねて動く気質の母と、後のことは後で考える、明日は明日の風が吹くと自分のしたいまま好きなように己の直感に従って動く気質の梔子。

ノリの良さは同じみたいだが、異なる気質が上手く噛み合ったから今の関係になったのかも知れない。


そんな相棒の言葉を受けて、伽羅は目を細めてくすくすと嬉しそうに笑った。横を向き続けて首が痛くなったのか、ゆっくりと天井に視線を移す。


「そっか、頑張って当主をやってたからあたしは梔子と相棒になれたのかあ。

そっか、そうなのかあ……すっっっっごく嬉しい。

今日ほど真剣に当主をやっていて良かったと思った日はないよ。

良いこと聞けて良かった」

「頑張りすぎて頑なになられた時は流石に困ったけどな〜」

「それは言わないでよ。そういう性格だから仕方が無いんですー」

「ははっ、それもそうか」


最後の悔いも無くなった。もう後は死ぬだけだとでも言うが如く、伽羅の顔も声も穏やかだった。梔子も覚悟が出来ているのか、そんな伽羅を受け入れて同じように優しい顔になっている。………が、駄目だ。樒はまだ、その空気を受け入れられない理由があった。


(…………何を勝手に全て済ませた気になっているんだ?

こっちは弱ってる母さんに芥子が戻る前に言うのは憚られるから、やっと言えると思ったんだが?)


母に伝えたいことがある。あの日、母が血を吐いた瞬間から、ずっと考えて考えて考え抜いて出した答えを。

まだ眠らせてたまるものか。悔いはないじゃない。終わらせるか、俺だって言いたいことがあるんだ。言わせる暇もなく死ぬなんて、誰が許すものか。俺はそんなこと認めない。


「待ってくれ」

「っえ?」

「ん、どうした?」


二人の手を強く掴み、流れていた穏やかな空気に無理やり食い込む。突然掴まれて驚く二人をよそに、樒はここで終わらせてたまるかと強い意思を持った目で伽羅を見る。


「待ってくれ。母さん、俺の話を聞いくれ。

苦しいだろうが、息子の最後の我儘を聞いてはくれ」

「え、うん……うん?  

良いけど、どうしたの……?」

「おれもさっぱり分かんねぇが……一先ず聞こうぜ。伽羅ー、頑張って生きてろよー」

「そうだね、取り敢えず頑張って呼吸して生きるー……」


目を白黒させて戸惑う母と梔子を置いてけぼりにして、樒は二人から手を離すと姿勢を正した。しゃんと背筋を伸ばし、真っ直ぐに伽羅を見る。


今から言う言葉は、死に行く母にとって迷惑かも知れない。

だが、それがなんだというんだ。可愛い息子が精一杯考えた末の言葉だ。母は家族に甘い、俺に甘い。普段我儘を言わない俺からの言葉だ、迷惑だろうが押し通してやる。


「母さんが血を吐いて倒れたあの日から、俺は考えていたことがある」

「あー….あんたが澄をからかってあたしがぶっ倒れたあの日?」

「ああ。吐血して倒れる母さんに、俺はどうすれば良いか分からなかった。どうしてやればいいか、分からなかった」


あの日どうすることも出来ず動けなかったことを、樒は悔いていた。突然の出来事とは言え、もっと早く行動していれば母の苦しみを軽減出来たかも知れない。

今となっては“たられば”な話だが、悔いてしまう己の気持ちと、母を思う気持ちを蔑ろにしたく無い。


「樒、それはしょうがないよ。身内が大量吐血したら誰だってビビるって」

「ああ。

それにおれ達は呪われてんだ。元凶が悪いんだし、樒が自分を責めなくていいんだぜ?」


だから気にしなくていい。言外にそう告げる母と兄に、そんな言葉は不要だと言わんばかりに樒は首を振る。

そして少しだけ、沢山の家族の死を見続けた母と兄に、樒の何かが声なく叫びを上げた。

 

(それは、何でもないみたいに言うことじゃないだろう……!)

 

この叫びは、非凡をしょうがないと、そういうものだと受け入れてしまっている二人への悲哀の声だと。

 

人間という言葉に固執していた母でさえ、息子を慰める為とは言えそんなことを言ってしまうその事実。己は他者にも自身に対しても、感情や心の機微に疎い方だ。だがそんな自分が、思ってしまう程に。


(────死は、慣れていいモノじゃないだろう。

どうしてそんな悲しいことを、何でもないように言うんだ)


年長者となり幾人もの死を見たら、誰しもがこうなってしまうのだろうか。慣れないと、やっていけなくなるのだろうか。麻痺してしまうのだろうか。

樒は漠然と、この一面は似たく無いと、強く強く心に思った。


「それでも、だ。俺はあの日を悔いて考えた。

今すぐ朱点童子に挑むことは叶わない、母さんが死ぬことを変えられない。

だからせめて、少しでもいいから母さんに報いたいと思ったんだ」

「樒……」

「……そっかあ。

それで?  樒はどうしたいんだ?」


何て返せば良いのか分からないと言っていような、動揺した声色で伽羅は息子の名前を呼ぶ。そんな伽羅を気遣ってなのか、梔子は母の手をそっと掴んだ。そして寝たままでは自身の胴体横辺りまで離れている樒と喋りにくいだろうと、梔子は伽羅の上体を再び起こした。


起き上がったことで、はっきりと親子の視線がかち合う。

強く射抜く、祖父の額の第三の眼と同じ色をした赤い眼。動揺で揺れ動く、蛍が棲まう水辺のような澄んだ色の青い眼。その二対の目が交差し合う。


「俺なりに考えて出した報いは、共に在ること。

このまま死んで、あの世で見守るなんてつまらない思いはさせない。

それが俺に出来る、一番の報いだと結論付けた」

「ここに宣言する。俺は今年、必ず朱点童子を倒す。死んでようが家族の思い全て、俺は連れて行く。

そのために母さんの代わりとして、ずっと身に付けていたその耳飾りを貰ってもいいか?

呪いを解くのなら、俺は家族全員とも解く。解いてやる」

「……死後だろうと、関係ない。我儘だって分かっている。不毛な行為になる可能性も理解している。

疑り深い祖先達や母さんのお陰で、俺は朱点童子を倒したからと言って必ず解けるとは思ってい無い。無条件に天界も信頼していない。

それでも、元凶に挑める事実は変わらない。挑めるなら母さんだって、ぼろ鼠にしたいだろう?  」

「だから、百鬼伽羅も連れて行く。

ここまで俺や澄達一族を育て上げて、露払いをしてお膳立てをしてくれたのは貴女だ」

「これは次代当主として、息子として、三代目である母に報いたいんだ。

だから、頼む。ずっと身についていたその耳飾りを、貴方の代わりとして、連れて行きたい。……耳飾りを、俺に託して欲しいんだ」


言い切ると、樒は静かに平伏する。視界一面が目に優しい畳の色しか見えない。伽羅はどう答えるだろうか。畳しか見えない樒には、今二人がどうしているかは分からない。


(母さんの性格からして、息子がここまでして断る可能性は低いだろう。

それでも、絶対は無い)


己の打算的思考が、大丈夫だと告げている。もし駄目だったら時は、死後に勝手に手にすれば良い。

だがしかし、出来る限りそんな真似はしたくない。

緊張しているのか、指先に力が入ってる。強ばる手を見て時を過ぎるのを待つ。

 

…………一分、いや数分だったかも知れない。静かに、声を掛けられた。


「樒、顔を上げて?」

「……」


そっと顔を上げると、優しい顔をした伽羅と目があった。その様子からは拒絶の感情は見えなくて、樒は静かに安堵を覚える。

伽羅は嬉しそうに己を支える梔子に目をやると、掴まれた手を離して大げさに上下させながら自慢げに語り出す。


「ねえ聞いた相棒。うちの息子の言葉」

「勿論だ相棒。しっかりとこの耳で聞いたぜ?」

「あたしも連れて行ってくれるんだって。やったね、まだ暴れられるみたい」

「ああ、それは楽しみだな」


頬を緩ませて興奮気味に語る伽羅を、梔子は同じように嬉しそうに相槌を打つ。どうやら樒の言葉は、思った以上に好意的に汲み取って貰えたようだ。


一通り楽しそうに語り倒すと落ち着いたのか、伽羅は手を膝に下ろして樒へ向き直る。

片方の空いている手で耳飾りを外すと、そっと指で耳飾りの縁を撫でた。


「この耳飾りはね、樒のお祖父ちゃん….愛染院明丸が、下界に降りる時にお守り代わりにって渡してくれたんだ。

貰ったその日からずっと大事に付けていたから、最早あたしの一部みたいに感じてたな……これ」


かつて貰った日のことを思い出しているのか、伽羅は目を細めて優しい声色で語った。

樒の脳裏に、あの耳飾りが祖父の物だと教えて貰った日の記憶が蘇る。

 

「あたしは、樒の言葉が嬉しかった。だからこの耳飾りは樒にあげるよ。

でもね、一つだけ覚えておいて?」

「……」


耳飾りをぐっと軽く握って、伽羅は真剣な眼差しで樒を見据える。

それに呼応するように、樒は背筋を伸ばして見つめ返した。


「もし今後、この耳飾りが重荷に感じることがあったら。その時は遠慮せずに捨てて。

これは母として、先代当主として、両方の立場からの言葉だよ」


いい?  と念押しするように伽羅は告げる。

樒は頷いて応えると、耳飾りを受け取るべく手を伸ばす。


「…………分かった。

ただそんなこと、絶対にしないと思うけどな」

「……うん、まあ、それならいいよ。

はい。折角だから付けて見せて?」

「ああ」


受け取って母と同じように左耳に付けてみると、樒は伽羅達に見せるため顔を横に向ける。

その様子を、伽羅と梔子の二人は嬉しそうに見つめていた。


「いいな、似合ってるぜ樒」

「ね、カッコいい」

「….こういうの付け慣れていないから、違和感があるな」

「大丈夫、いつも付けていたら直ぐに慣れるよ」


片耳に揺れる耳飾りが気になってつい触ってしまう。これまで耳飾りを付けるようなことが無かったせいで、樒は何度も手で触れていた。


そんな息子を見て伽羅は梔子と嬉しそうに微笑んでいた。だが沢山喋って疲れてしまったのか、支えてくれている梔子へと少し寄りかかる。


「疲れたか?」

「ちょっとね。横になりたいかも」

「そっか。なら芥子が戻って来るまで目ぇ瞑って休んでろ。

ちゃんと起こす。一旦手ぇ離して横にするぜ?」

「うん、お願い」


梔子は支えるために肩に置いていた手に神経を集中させて、伽羅がフラつかないように注意しながら横に寝かせそっと布団を掛け直す。

伽羅はお礼を口にすると、本当に疲れていたのか直ぐに目を閉じた。


「母さん、芥子が戻って来たら俺達が起こす。そのまま眠って休んでろ」

「そうだね、そうしようかな」

「戻ってきて樒の耳に伽羅の耳飾りがあるのを見たらビックリすんだろうな、あいつ」

「あはは、たしかに」


瞼を閉じたまま話している梔子の方に顔だけ向けて、伽羅は楽しそうに語る。


そのまましばらく樒達三人で何の変哲も無い穏やかな会話をし、自然と会話が途切れた時のこと。

独り言なのか、それとも語りかけたのか。どちらか判断が難しい位直ぐに空気に溶け込みそうな程小さな声で、伽羅は天井を見上げ、ぽつりと呟いた。


「……ね、あたしさ。

一族のため、明日のため……、そう思って色々我慢したし、捨ててきたよ」


再度何か言葉にしようと口を開いたが、伽羅は緩慢な動きで一文字に口を結び、樒達の方に顔を向ける。

向けられた顔には何の色も浮かんでおらず、ただただ綺麗に、ただただ確かに、己の息子と相棒の姿を反射して映し出す。


「ねえ、……今のあたし、何が残ってる?」

「……母さん」


これはきっと、伽羅がずっと思い続けた疑問なのだろう。

伽羅本人の口から同じことにならないようにと、母の苦悩を教えられていた樒はそう素直にそう感じ取った。


だが、感じ取れたからとしても。


(どんな言葉が、母さんの一番欲しい言葉なんだ?)


樒は即時に答えることが出来なかった。固まってしまった。

どう答えるか、自分なりの答えでもいいのだろうか。ぐっと唇を噛み締めて、刹那の間に様々な言葉を思い付いては消していく。息子として、次代として、消え去る伽羅にどう答えれば良いのかと。

 

(……最善が分からない。迂闊な発言をして、母さんを悲しませたくない)

 

大事だから、大切だから戸惑った。

機微は疎くとも、樒は頭は悪くない。月並みな言葉や、妥当そうな発言は喉元まで幾つか浮かび上がってはいる。

思考能力が悪くないゆえに、どれを言えばいいのか、それらが最良なのか分からなくなってしまうのだ。

 

「っ、……母さん」

 

何か、なんとか口にしようとした。

だがそれよりも早く、大事だから、大切だから動いたものがいた。

 

「伽羅、」

「ん……?」


────答えを出したのは、火色の赤だった。

伽羅の手を握って、梔子は口を開く。


「んなの、分かりきったことだろ。

それでも、色々捨ててもそれでも最後まで捨てれなかったモノ達が、少なくとも今伽羅の前に二つもあるだろうが。一族のためにおれ達を駒として使い捨て無かった、大事に抱えてきたから此処にあるんだろ。

勿論この部屋の外にも、目に見え無いようなモノでも、ちゃーんと伽羅に残ってるモノはあるぜ。おれが保証する」


自分の位置から見えるその横顔は、とても優しい顔で母で見つめていた。

出された答えは暖かくも力強くて、梔子が心からそう思っているという事実がありありと樒に伝わる。この兄は本心から言っているのだと。


梔子の言葉を受け、伽羅はじっと梔子の顔を見て様子を伺い、彼が心から思っていると理解すると安心したような顔で笑った。

そのままゆっくりと伽羅は瞳を閉じて、握られた手に顔を寄せる。そしてそっと呟いた。


「そっかあ……ああ、良かった」


その顔はとても、安らかだった。

 

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それでも 2

七月中旬、風鈴の音だけが涼しげな広間前の縁側にて。


縁側には右から順に山茶花、伽羅、恒春。三人して木桶にたっぷりと満たした水に足を浸し、各自で涼を取りながら目の前の光景を眺めていた。


「あー……あっつい。暑いだけど、凄く平和。良いことだよねー……」

「そうね……姉さまの言う通りだわ。暑いけど、とても微笑ましくて平和ね」

「平和だとはオレも思うけどさ……こうも大きな声出されると暑いのもあってちょっと困るんだけど……」


大きめの竹筒から自分達三人分の冷たいお茶を注いで渡す山茶花、器用に術を繰り出し霧雨のようにした水を自分達に浴びせる伽羅、その出した水を術でおこした風で大雑把に付近の地面に打ち水する恒春。

渡された冷たいお茶を少し飲むと、恒春は湯呑みを床に置いて一息つく。


現在三人の視線は、少し離れた木の上下で言い合っている二つの赤色に注がれていた。


「なあ澄ー、取り敢えず降りようぜ?  

ほら、お父さんが受け止めてやるから。な?」

「い  や ‼︎  お父さんなんて伽羅姉さんのところへいっちゃえばいいの!

どこかいってよ!」

「どっか行ったらそれはそれでお前怒るだろー….?  兎に角木の上は危ぇって。お父さん澄と一緒に居たいんだけどなー?」

「嫌ったらいーーーやーーー‼︎」

「……」


「伽羅姉さん、困った顔で梔子兄さんが助けを求めてきてるけど。どうする?」

「放置一択で〜」

「はーい姉さまー」

「あーあ。兄さん頑張れー」


しっしと恒春がこっちを向くなと言いたげに片手を振ると、梔子は悲しそうに肩を落として木の上へと視線を戻した。


なんともまあ、年頃の子供はこうも気難しいものなのか。恒春は大きな声で梔子を拒絶する澄を見ながら、こうなったことの経緯を振り替える。

 

 

前兆はそう、数日前から確かにあった。

始まりは十日ほど前のこと。芥子が交神に向かい、少し広く感じるようになった家の中。澄は何か頼まれていたのかそれとも訓練を師事されているからか、伽羅の世話を焼く姿を恒春はよく見かけた。


伽羅が暑そうにしていたら手ぬぐいを渡したり、重そうな物を持っていたら手伝ったり。自分を含め、家族全員でその姿を微笑ましく見守っていたのを覚えている。

ただ良いか悪いかは分からないがそうやって伽羅の近くにずっと居たことで、あることが澄には分かった。今まで見えていなかったものが見えてしまったのだ。


父親である梔子が、しょっちゅう伽羅とつるんでいると言う事実に。


最初は澄もそこまで気にしてはいなかった。ただ純粋に疑問に思ったのか、ちょうど近くを通りかかった恒春に不思議そうに聞いてきたくらいだった。


『恒春兄さん。お父さんと伽羅姉さんはとってもなかよしなの?』

『あー、うん。そうだね、あの二人はとっても仲良しだよ』


その時はそれで納得したのか、それから数日は何とも無かった筈だ。

しかし姉の寿命が近いせいか、兄はしょっちゅう伽羅の元を訪れていた。それ故に余計に目に入り気になってしまったのだろう。


自分の独白にフォローを入れるのもどうかと思うが、念のため。

自分を含めて家族全員が、暇さえあれば伽羅に会いに行っていた。だがそれでも、兄が一番訪れていたと恒春は思っている。なんで二回に一回もの確率で姉に会いに行ったら部屋にいるんだ、あの兄は。暇なのだろうか。


(梔子兄さんはかなりの自由人だよね……嫌そうにしていてもオレに構ってくるし。でも自由にし過ぎたから、今こうなったんだよね。そこは少し、……いい気味)


澄は伽羅の世話を焼いていたからか、しょっちゅう彼女の側にいた。そして父の梔子は、しょっちゅう彼女に会う為に訪れていた。そのことが棘のように心に引っかかって深く根を張り、少しずつ不満を覚えたのだろう。

そして徐々に段々と、今日爆発に至るまでの片鱗が、少しずつ澄の影から出てきてしまったのだ。

例えば、伽羅の側にいない時は大抵書写をしていたり、梔子をみると少しむっとした顔になったり、なのに本人達の前では何ともなさそうにしていたり、樒に口喧嘩を吹っかけることが増えたり……。


今思えば、何故こんなにも可笑しな点があったのに己は気付かなかったのか。もっと気にかけるべきだったと、恒春は反省の念を覚えた。


そして積もり積もった思いが今日、ついに澄の気持ちが爆発したのだ。

暑いから涼を取らないかとちょうど訓練の小休止をしていた姉と澄の二人に、自分と山茶花が声を掛けたのが始まりだった。実は元々四人で寛いでいたのだ、兄が来るまでは。


樒と二人で道場に籠っていた筈の兄が、術を上手く使えば涼しくすることが出来ると気付いてはしゃぐ自分達の元へとやってきた。

そして恒春から見てもただの他愛ない話を伽羅と梔子がしていたら、ついに我慢できなくなったらしい澄が突如ブチキレたのだ。


『もう、もう、……だーーーーー‼︎!』

『きゃっ⁉︎』

『うるさッ』

『し、心臓が……!  年寄りだから心臓に悪い……!』

『おわッ⁈ ど、どうした澄。んな大声だして….ビビるだろ?』

『お父さん‼︎』

『は、どうした….?』

『お父さんの….お父さんの….‼︎』

『お、おう』

『お父さんのッッッバーーーーカ‼︎‼︎  お父さんなんてっ、伽羅姉さんとずっといればいいんだ‼︎!』

『は、おい澄……ッ‼︎  って足早っ、つかなんで木⁉︎  上んの早いな!?』


爆発した澄は何故か全速力で走って駆け上がって木の上へ。梔子はそれを追いかけて近くへ。そして取り残された恒春達はどうすることも出来ず、取り敢えず見守ろうという結論を出した。以上が、何故あの親子があんなことをしているかの顛末である。

そこそこ復興したとは言え、こんなにも平和な出来事を荒廃した京で見れるとは。都の外を出歩けば鬼が彷徨いているとは思えない、なんともほのぼのとした会話だ。….本人達からしたら必死な会話なのだろうが。

姉の術でしっとりとしてきた顔を裾で拭いながら、恒春はつかの間の平和を噛み締めた。

 

 


「……ううん。

伽羅姉さま、質問してもいいかな?」

「んー?  なに?」


取り出した扇子で自身や恒春達に風を送りつつ、山茶花は梔子達に視線を向けたまま問いかけた。


「澄ちゃんは、兄さまが姉さまとばかりお話するからああなったのでしょう?

嫉妬したのなら、姉さまにも怒るものじゃないのかな?  どうして澄ちゃんは、梔子兄さまにだけ怒っているのかなあ….?

少し、不思議に感じたの」

「それはオレも思ってた。普通に考えて、伽羅姉さんに嫉妬が向くものなんじゃないの?」


普通、人は好きな人が他の人間に取られたと感じた場合、その取った人間に負の感情が向かうものではないだろうか。

自分だったらそう思うと、恒春ははっきりと言い切れる自信があった。


そんな両隣の弟妹達の言葉に伽羅は、のんびりとお茶を一口飲み干してから澄の心情の考察を話し出した。


「確信を持ってこういう理由だとは言えないから、仮説でしかないんだけどね?

澄の中でのあたしが、“ お世話して見守ってないと心配なおばあちゃん ”ってなっているんだよ、多分。だから向かなかったんだと思うんだよね」

「……要するに澄は、伽羅姉さんに気持ちをぶつけたら年寄りイジメになると思ってる。そんなことしたくないから、不満を全部兄さんに向けた……ってこと?」

「私達からしたら姉さまは姉さまだけど、澄ちゃんから見たら違うのね……。

確かにこの間、澄ちゃんが伽羅姉さまを“ 姉と言うよりおばあちゃんに見えることがある ”って言っていたような……」

「ね、そうでしょ?  

それと一つは、澄くらいの年頃って心体どっちも急成長する時期でしょ?  

そのせいで心の整理が上手く出来なかったのかもね」


と言っても多分だからね?  多分、と念押しをする姉を余所に、恒春と山茶花は納得していた。

かつて兄と共謀し、街の菓子屋の菓子を全種類一つずつ買い占めて品評会をする。オマケに食べすぎて腹を壊す。そんな馬鹿騒ぎをする気力は、姉にはもう無い。

正直姉はそういう突飛な行動をしなければまだ多少、それなりに常識人に見えるのだ。


だから澄から見た今の伽羅は、普通の弱った人に見えたのだろう。このことから当たる訳にも行かず、矛先が全て梔子に向かったのだ。


そしてもう一つの、姉が最後に言った説も納得がいく。

自分もこの家に来たばかりの頃は、どんどん大きくなる己の体や感性についていけなくなったことがあった。全てが気味が悪く、これ以上成長したくなくて食べたくなくて、食欲が落ちたのだ。

澄の場合、きっと反抗期として成長の弊害が出たのかも知れない。


「ずーみちゃーーーーん、本当に木の上は落ちたら危ないんだって。これからはもっと澄を大事にする。しっかり行動で表していく。お父さん反省した。

だからお願いだ、そろそろ降りて来てくれねぇ?」

「別に私おこってないもん。ちょっと木登りしたかっただけだから。

お父さんはあっち行って!」

「おれはもし澄が落ちたらって思うと心配なんだよ。

そうだ、おれも木に上ったら駄目か?」

「い  や !」

「おぉ….そっかー……嫌かー……」


あまり良いモノではないと理解しているが、普段自分を振り回している梔子が振り回されるサマを見るのは、なんだかとても愉快な気持ちを抱いてしまう。

澄にもっと困ってしまえだなんて、自分はそんな酷いことを思ってしまっている。


(こんなこと思ったら駄目だって分かってるけど………本当にいい気味って感じ。

もっともっと困ってしまえば良いのに)


心中で嘲笑う。そんな最低な行為をしていたせいで、悪どいオーラでも滲み出てしまったのだろうか。

兄を見てスカッとしていると、突如伽羅に頬を指でつつかれた。驚いて慌てて振り返って隣を見ると、姉が人差し指を突き出していた。どうやらその指で驚かせたらしい。


「恒、今何か悪いこと考えていたでしょ?  

悪い顔してたよ」

「えっ、恒春兄さまの悪い顔?  気になるわ……!

お願い兄さま、もう一回して?  見ていなかったの」

「ごめん山茶花。悪いけどそれは嫌」


そう、残念と頬を膨らませる妹に、再度ごめんと軽く謝る。

どうやら妹はとても見たい訳では無かったようで。山茶花は簡単にこの話を流し、興味を桶に入れている己の足へと移す。軽く足を振って水がどこまで飛ぶかという遊びを、彼女は楽しそうにし始める。


こういう面を見ると、山茶花がまだまだ子供だとよく分かる。

この間元服したばかりな自分の妹だから、当然のことではあるが….それはそれだ。


「こーぅ。山茶花が楽しそうにしてるのが微笑ましいのは分かるけど、あたしの質問に答えることを忘れてるよ?

恒春はいったいどんな悪いことを考えてたのかな?」

「あっ、姉さんごめん。つい。

でもオレ、別に何も悪いことなんて考えてないけど?  伽羅姉さんの思い違いでしょ」

「本当?  こーんな顔してたんだよ」


姉なりに恐ろしい表情を作って見せてくるが、正直あまり怖くない。討伐時の鬼を前にした時に比べたら、今の表情なんてちっとも恐ろしく感じない。

さっきはきっと、日頃の鬱憤が溜まっていたせいで顔に出てしまったのだろう。失敗したと恒春は少し内省した。あんなことを考えていただなんて、誰にも知られたく無い。


「本当に何も考えてないから。伽羅姉さんしつこい」

「んー……そっか、ならいいや〜。

山茶花ー、あたし疲れてきたから霧雨を出す係代わって貰ってもいい?」

 

これ以上の追求は良くないと伽羅は判断したのか、恒春への追求を軽く終わらせる。

そして年のせいで本当に疲れたのだろう、お茶を飲んでいた山茶花に交代して貰えないか話を持ち掛けた。

 

「うん、勿論よ。でも私、霧雨を出すやり方がよく分からないの。

姉さまに教わってもいい?」

「いいよ~。  山茶花は水の術の扱いが上手だから、きっと直ぐに覚えられると思うな」


伽羅は霧雨を消して、山茶花にやり方の伝授を始めた。まずは白浪を極少量で出すイメージで……と話しているのを聞き流しながら、恒春は雨が無くなったから風はもう不要だと思い、同じように発動していた風を止めた。


どちらも消したせいで、蒸し蒸しと暑い空気が肌に刺さり出す。せめて僅かでも体を冷やしたくて、恒春は横に置いたままにしていたお茶を一気に飲み干した。

横二人が真剣に涼の取り方について話しているのを尻目に、手持ち無沙汰になった己はぼーっと、まだ攻防を繰り返している親子を眺める。


(あ、そう言えば….あれ、どうなっているんだろう……)


数秒か、数分も経った頃だろうか。

ふと、姉にいつか聞こうと思っては機会を逃して聞けなかったことを思い出した。それは早く聞かなければ、寿命故に伽羅に尋ねる機会はもう無いかも知れない。


ちらりと視線を投げて、二人の様子を見る。山茶花と伽羅はまだ、上手く霧雨を作るコツについて話し合っている。

……聞きたい内容的に、山茶花も居る前で聞いていいのだろうか。恒春は姉と妹に視線を向けたまま、どうしようかと躊躇する。


(ああでも山茶花だってきっと気になるだろうし今逃したら….もう、姉さんには聞けないかも知れないし。

…………いい、よね。もし聞いて山茶花が憂鬱な気持ちになったら、その時はしっかりオレがフォローしよう。

あの馬鹿姉兄にはしょっちゅう小さい子扱いされるけど、オレだって兄さんなんだ。妹をを大事にする位出来るんだよ。)


小さく拳を作って決心した恒春は、未だ話している伽羅へ問いかける為に身体ごと横を向く。何について聞こうとしているのか、それは。


────今年、大江山を登るか否かについて。


「….伽羅姉さん」

「少し風を混ぜてみるのも…………ん?  

恒春どうしたの?」

山茶花も話してるのに遮って悪いけど、一つ聞いてもいい?」

「構わないわ、兄さま。どうぞ?」

「ありがと。姉さん、あのね」


決意したのに、言おうとしたら嫌なモノが己に囁く。

……今年登らないのならば、梔子兄さん、芥子、自分の三人は確実に死ぬ。山茶花も、もしかしたら死ぬかもしれない。それは、嫌だ。怖い。


百鬼恒春というイキモノは、戦いその物や戦って死にかけるのは怖くないのに、寿命で死ぬという当然の事実には怯えるようだ。

どちらも恐ろしく思うのが当たり前な筈なのに。それなのに自分は、戦いを好むようになっている。命をかけて、生死の淵を渡るのが心地よい、と。

それにこうやって寿命で尽きるのが恐ろしく思うのは、家族が、自分が、命をかけて戦えなく為るのが嫌だからではないか。そうやって深みに嵌るが如く、悪く悪く考えてしまう。

相変わらず己の感性が理解出来なくて、……正直、不気味だ。


(普通じゃない….意味が分からない….)


心を蝕む価値観と嫌忌に、苦虫を噛み潰したような気持ちなる。

嫌な考えが横切ってしまったせいで中途半端に途切れてしまった言葉の続きを、恒春は何も言わずに待ってくれている姉に向けた。


「今年は、大江山に登るの?それとも、登らないの?」

「恒春….」

「兄さま、それは….」

「ずっと気になってたんだ。今のところどう考えているかだけでもいいから。知りたい」


もう今年になって半年を過ぎた。冬に向けての戦力も整ってきている。少なくとも、登るか否かは大方決まっている筈。

答えあぐねている姉の奥で座っている山茶花を見る。自分の問いを聞いて彼女は静かに、姉がどう答えるのか待っていた。


もし妹が大江山の元凶に対して非常に悪感情を持っていたとしたら、この質問だけでも何かしら表情に出て来ると思ったが….どうやら、大丈夫なようだ。恒春は内心で安堵した。

見つめてくる二対の青眼を受けて、伽羅は気まずそうに頭を掻きながら恐る恐る口を開いた。


「ええと、答えを希望しているとこ申し訳ないんだけどさあ……あたしにも登るかどうかは分からないんだよねー….」

「……………は?  まだ決めてないってこと?」


自分や山茶花達は戦力としてそれなりに力をつけた。自分達になにかあったとしても、次に繋げられる樒と澄もいる。だから恒春は、既に行くかどうかの検討はつけていると考えていた。だが伽羅にも分からないとは……どういうことなのだろうか。


驚いて固まる恒春よりも先に冷静になった山茶花が、あ、と声を上げて得心がいったかのように手を叩いた。


「もしかして、大江山に行くかどうかは樒ちゃんに任せているの?」

「そう、山茶花大当たりだよ」

「なるほど、そういうことだったんだね….」

「自分で言うのも難だけど、あたしは冬にはもう居ないからね。先人が先のことに手を伸ばし過ぎていたら、次に率いる樒にとって邪魔だろうし。だからあたしは何にも分からない。

恒春、どうするかは樒に聞いて?」

「そ、っか……そうだよね….」


全然、全く、これっぽちも、恒春は伽羅に言われるまでその発想に至っていなかった。自分が家族になった頃には、姉はとっくの昔に当主となっていた。次は樒が当主になるという事実は頭に入ってはいたが、どうやら己は、きちんと理解していなかったらしい。漠然と、姉が当主なんだから姉が決めるんでしょと決めつけて、そこで思考停止していた。


(少しもその可能性を思いつかなかったとか、オレ馬鹿みたいじゃん。恥ずかしいなあもう!)


穴があったら今すぐにでも入りたい、そんな猛烈な恥ずかしさが恒春を包んだ。後で樒に聞くかどうかや、山茶花が気にしていないか等。気になることはあったがそれよりも今は、羞恥で赤くなった顔を誰にも見られたくなて堪らなかった。


「そっか……樒ちゃんが当主になるものね….」

「そー。だから詳しいことは全部うちの息子に聞いてね……って恒春、顔赤いけどどうしたの?」

「何でもない、何でもないから。気にしないで」

「恒春兄さま大丈夫? お顔がとっても真っ赤よ」

「本当に何でもないから! 二人共お願いだからほっといて!」


赤い顔のままそう言うと、伽羅達は何故恒春がそうなっているのか分からないせいで、ただただ心配そうに見つめて来た。頼むからそっとしておいて欲しい。


そんな風に三人でわいわい言っていると、いつのまにかノイズとして綺麗に断絶していた、あの親子の一際大きな声が庭中に響いた。


「いーーーーやーーーー!  お父さんあっち行って! ハウス!」

「はっはっはぁ!  残念だったな澄!

おれは犬じゃないからその言葉には応えねぇ……!」

「それなら….! これでもくらっちゃえっ」

「あ、ちょ、葉っぱと枝投げるのはやめろ!  痛ぇから!」


「……………なにあれ」

「どうやら、ついに梔子が強行突破に出たみたいだね。笑い方が完全に小物染みてるよ….」

「この場合、梔子兄さまか澄ちゃんのどちらかを止めた方がいいかな……?」

「いや、止めるのはもっと危ない雰囲気になってからでいいんじゃない?

一応まだじゃれ合いの範囲に入ってると思うし」


何が起こったかと言うと。梔子が全然下りてこない娘を下ろす為に木に登りだしたのだ。

その結果澄はめちゃくちゃ拒否反応を出し、枝や葉を千切っては梔子に投げ出したのである。


自分への関心が逸れたおかげで幾分か冷静になった恒春は、一人ほっと一息ついた。

もっと危ない感じになってからと山茶花に言いはしたが澄が可哀想に見えてきたし、木はどんどんボロボロになりそうだ。

いい加減間に入って止めるべきだろうか……?


叫ぶ澄と高笑いして木に上る梔子、それを見守る三人。あの親子のせいで辺りがカオスに包み込む。どうするべきか恒春が躊躇していると、この場にまさかの人物が現れた。


「……一体何をしているんだ」

「あ、樒」

「げっ、しーちゃん!」


道場で鍛錬でもしていたのだろうか、手ぬぐいを首に掛け薙刀を片手に持った樒がやって来た。井戸で水でも被ったのか、髪から水滴が零れている。


樒は嫌そうにされても我関せず、一直線に梔子達が居る木の根元へ。

そしてそのままじいっと、一番高い枝の上にいる澄へと視線を送った。


「伽羅姉さん、あれ大丈夫?  また二人が喧嘩になったりしない?」

「う〜んどうだろ。まあ面白そうだし、ここは様子を見ようよ」

「….そうね。そう簡単に喧嘩になったりしない….と思いたいもの」


樒と澄はちょっとしたことでじゃれ合いのような喧嘩を良くする。

年が近いからと言うのも、喧嘩の理由としてあるのだろう。ただ恐らく一番の原因は、樒は澄を妹だと思っているが、澄は樒を対等な相手だと認識しているせいだ。この認識の齟齬故に、喧嘩をしてしまうことがちらほらあるのだ。

と言っても樒は喧嘩をしているつもりは無いらしく、本人的には妹と楽しく話しているくらいにしか思っていない。多分、樒のそういうところが澄は嫌なんだと思う。悲しいくらいに通じていない。頑張れ澄。


ちょくちょく喧嘩をしてもこんなに軽く見れるのは、どちらも後を引かない質なおかげだろう。樒はそもそも喧嘩をしている気が無いせいでいつもけろりとしているし、澄は書写をすると精神がお落ち着くらしく、よっぽどのことがあっても書写をしたらすっきりして回復する。そういうところは正直助かっている。

だがどちらにしろ喧嘩をしていることに変わりが無いので、恒春的には早く大人になって欲しい次第であった。


頼むから喧嘩はするな、そんな気持ちを込めてことの成り行きを見守っていたら、ついに樒が動き出した。


「……澄」

「なっ、なに。しーちゃん」

「だからその呼び方は……いや、もういい。

ただ、そうだな」

「….いったいなんなの?」


口元に手を当てて、何か意を得たように一人満足げに樒は頷き出した。そんな彼の姿を見て、澄は分かりやすい程に警戒心を上げだした。


ちなみにその間に挟まれている梔子はと言うと、中途半端に登っていたが、二人の会話の邪魔になるとでも思ったのだろうか。ひょいと軽やかに飛んで、樒の隣へと着地していた。


「樒、澄に何か用でもあんのか?」

「そうだよ。一人で言っていないで、用があるならハッキリしてっ」

「ああ、それはすまない。

何というか…………“子供らしくて愛らしい”とは、こういう様を言うんだな….って思ったんだ。大の大人が年老いた親にしてたらどうかと思うが、子供だとこうも愛らしいのかと。それだけだ」

「……!」

「ぅっわー……」


「あっちゃー……」

「樒ちゃん……」

「あーあー……」


恒春達の心配をよそに、樒は珍しく薄らと笑った。いい笑顔なのだが、今の恒春には態とらしいものにしか見えない。

いや、たまに澄が喧嘩をしかけては流されて悔しそうにしているのを、あの弟は楽しそうに見ていなかったか?  これは自分が見た錯覚だろうか。


対等に見ている相手に子供っぽいと、ぽくて可愛いと言われて、ムカつかない人間は居るだろうか。いいやおるまい。

見守っていた全員がハラハラとした気持ちで、澄に視線を向ける。

彼女は樒の言葉を受けて固まっていた。だが段々と顔を下に向けてしまい、今どんな表情をしているのか彼女にしか分からなくなってしまった。


「…………お父さん」

「お、おう……」

「下りるから、うけとめて」

「は、? あー….ああ、分かった。

しっかり受け止めっから、安心して飛び込んでいいぜ」


恐ろしい程大人しく、澄は今まで散々嫌がっていた筈なのに、両手を広げて根元に立っている梔子の懐へ飛び込んだ。


「よ….っと。どこも痛いところは無ぇよな?」

「うん、大丈夫だよ。ありがとう」

「….マジで大丈夫か? 色んな意味で」

「大丈夫だよお父さん」


心配そうに見つめる梔子を余所に、下ろされた澄は樒の真正面まで行くと、腰に手を当てて大きく息を吸い出した。

対する樒はと言うと、いつもの通り仏頂面で澄を見下ろしている。

これは澄が怒り出すぞと、その場にいる件の二人以外の全ての人間の気持ちが一致した。


「恒春と山茶花は樒を引き離して、澄は梔子がどうにかすると思うから!」

「わかった、姉さんはお茶でも飲んでじっとしててよね!」

「暑かったら私の扇子使ってね姉さま!」


慌てて下駄を履いた恒春と山茶花が飛び出した瞬間。梔子に抱えられそうになっていると言うのに、澄は今日最大レベルの怒りが籠った声を出した。


「しーちゃんの……しーちゃんのッッッっばーーーーかーーーーーーー!!! 

今日こそゆるさない!!!!」

「そうか、いつもは許してくれていたんだな。ありがとう」

「~~~~~~ッ!! おとうさん離して! 今日こそしーちゃんをやっつける!」

「いや駄目だからな?? 澄、おれとお出かけしようか! 甘味屋で好きな物頼んでいいぜー?

おれは何食べようかなー楽しみだなーーー!」

「お父さんはーなーしーてーーー! もーーーー!」


血気盛んに怒って父から逃れようとする澄を脇に抱えて、梔子は速足で樒から引き離していった。門のある方向に向かっているのを見るに、本当に甘味屋に行くのだろう。

自分と山茶花はその隙に樒の手を引いて、伽羅の元まで連行する。この次代達は大丈夫なのだろうか、喧嘩する度に心配に思ってしまう。


「樒、あまり澄を怒らせたら駄目だからね。修復不可能になる位怒られたらどうするの?

取り敢えず伽羅姉さんのところまで行くよ、怒られてきな」

「澄ちゃんが可愛いのは分かるわ、でもさっきのは駄目だったと思うよ?」

「俺なりに可愛がっているだけなんだが」

「それに問題があるからこうなってんじゃん….」


恒春は彼が持っていた薙刀を空いた手で持つと、念の為何処にも行かないように二人で両手を引いた。引かれている樒はけろりとした顔で、大人しく伽羅の元まで歩いて行った。前から思っていたが、樒はイイ性格をしている気がする。本当に大丈夫なのかこの二人は。


伽羅はと言うと、自分の忠告通り冷たいお茶を飲みながら待っていた。姉はだいぶ年のせいで、暑い中一人で居させるのは心配な気持ちになってしまう。


「伽羅姉さん、兄妹の接し方とかきっちり樒に教えてやってよ。多分だけど樒は澄が怒るって分かってやってるよ」

「酷いな、恒春兄さんは俺のことを人でなしとでも思ってんのか?」

「あ、いいなあ兄さま。樒ちゃん私のことも姉さんって呼んで?」

「呼んだら見逃してくれるのか? 山茶花

「え、ううん。どうしよう….」

山茶花、そこで悩んだら駄目だからね」

「全員話がずれて無い? あたしは樒に何か言わなくていいの?」


ぺちゃくちゃと話していた自分達を見て、伽羅は呆れ返った顔をした。一言ごめんと姉に謝ると、恒春は樒の背中を押して伽羅の前に立たせる。目の前に立たせたし澄達もいないのだ、もう良いだろうと恒春達は樒から手を離した。


母親の目前に立たされた樒はと言うと、相も変わらず普段通りの顔をしている。表情が全然変わらないなこの弟。


「あー….樒」

「ああ」

「あんたがあんたなりに可愛がっているのはよく分かるよ。

だから.…そうだなあ、本当に駄目な境界を超えないよう気を付けてね?」

「大丈夫だ。そこはちゃんと気を付けている」

「そう? ならいいや。よしじゃあ解散! 閉会!」

「いやそれだけでいいの?!」


軽く終わらせる伽羅に、恒春は思わず間に入ってしまった。話し合っていた二人はあれだけで良いと判断したのか、まるで別に良いじゃないかと言いたげな顔をしている。良くないだろう。その可愛がり方をする度に間に入る身にもなって欲しい。


これでいいのかどうか確かめたくて、山茶花に援護射撃を頼もうとした。その時だった。


「いいんだっ….ごめんちょ、っと……ぅ、っごほ、….!」

「母さん?」

「姉さまどうしたの、お茶が変なところに入ったの?」

「ちょっと、大丈夫?」


山茶花が言う通り、恒春もお茶で咽たのだと思った。縁側に乗り出して隣で背中を擦ると、大丈夫とでも言いたげに姉は手で制する。だがしかし姉の咳は止まらず、苦しげに肩を大きく上下させ激しいものへと変わっていく。

その変わりようを見て、伽羅を囲んでいる自分達三人の表情が強張った物へと変わっていった。どんどん酷くなる咳に、恒春は嫌な考えが脳裏をよぎる。

 

(….これは本当に、ただの咳なの?)


かつて見送った山茶花の母、鹿子の姿が、今の伽羅と重なって見えてしまう。彼女も終わり間近になるに連れて、咳き込んでいた。

ただ彼女の死ぬ直前は、自分達はまだ幼かったせいかあまり会わせて貰えなかった。それでも、咳き込む音はよく聞こえていた。……姉のこの咳も、同じではないだろうか。


不安という感情程、心を浸食し易いモノはない。暑いはずなのに、指先が急に冷えていく感覚を覚える。伽羅の苦しそうな姿から視線を反らせない。今すぐにでも薬を持ってくるべきなのに、体が動かない。

視界の端で、自分と同じようにどうすればいいか分からなくっている樒が、ひたすらに姉の背中を摩る姿が映る。山茶花も同じように背中を摩りながら、伽羅に声をかけていた。

目の前の姉は山茶花の呼び声に答える余裕も無いようで、ずっと苦しげに咳き込んでいた。すると、


「は、っは、ごほ……ッ!」

「伽羅姉さま⁉︎」

「母さん‼︎」

「ぁ….!」


胸を抑えて一際苦しそうに咳き込むと、姉の覆っていた手の隙間から血が溢れ出す。それも一度切りでは無い。何度も何度も、伽羅咳をする度に溢れる血が増えていく。溢れ落ちた血は幾つもの赤い霰を着物に降らせていく。


戦いだったら、瀕死になるのも見るのも平気なのに。だって、あれは抗える。抗って打ち勝てば必ず生きることが出来る。だから自分や家族がどれだけ傷ついても怖くは無い。勝てば絶対に生きれるから。

けど、でも、これは……! こんなものは……!


大江山に入れもしない夏なのに! 呪い何てどうすればいいんだよ!!)


のちに恒春は語る。自分は姉の命の炎がか細くなったその時に、本当の意味で呪われた一族の人間になった、と….。


理解していなかった、分かっていなかった。

義務感で戦っていた。この家で生きる人間は皆していることだからと、ただ歩きたければ足を動かすように、眠りたいなら目を閉じるように、そういうものだからと何も考えていなかった。でもそうでは無かったんだ。

祖先や皆は、姉のように呪いで理不尽に振り回されたくなくて、死にたくなくて闘っていたんだ。

 

鹿子の時は幼くてよく分かっていなかった。けれど今、伽羅の死を明確に感じ取ってやっと実感した。


恒春がそう考えている間にも、伽羅の容態は悪化していく。上体を起こしているのも苦しくなったのか、ぐらぐらと倒れそうに体が動き出す。

今まで見えていなかったモノが理解出来たせいで、恒春はまともに動けなかった。この場で姉を除けば一番上なのに。樒も、目の前で母に血を吐かれてひたすらに姉の名を呼ぶことしか出来なくなっていた。

……最初にまともに動いたのは、山茶花だった。


「姉さま苦しいよね、私が支えるから姉さまが一番楽な姿勢を取れる?

樒ちゃんはイツ花さんにお医者さんを呼ぶように言って来て! 

恒春兄さまは梔子兄さま達を呼び戻して!」

「ぇ、あ、うん….! 直ぐ、つれもどすから….!」

「あ、ああ。分かった….!」

「お願いね!」


冷静になったらしい山茶花は手際よく指示を飛ばし、足を冷やす為に使っていた木桶の水を捨てて姉を支えながら口元に持って行く。

恒春と樒はその言葉を受けて、ぎこちなくだが動き出す。

 

樒は屋内に居る筈のイツ花を探して中へ、自分は兄達を探す為に外へと全速力で走る。


(芥子が帰って来るまで死なないんでしょ伽羅姉さんは!! ああ違う違う! 

それは今はいい!! 兄さん達を探すことに集中するんだよ.!!)


片羽ノお業を前にした時とは比べ物にならない程の緊張感が恒春を襲う。兄達は甘味屋に行くと言っていた、だから街に居る筈だ。早く早くと、急かす気持ちと共に足を動かす。

 

いつもだったら、街へと続く木々で煩く騒ぐ蝉の鳴き声聞こえるのに。

急ぐ恒春の耳には、今は何も聞こえなかった.。

それでも 1

七月初頭、庭にある大きな梅の木の真下にて。


「本当に大丈夫なの?」

「大丈夫だって、芥子は心配し過ぎ。

そう簡単に人は死なない死なない」

「そう簡単に死ぬ呪いに掛かっているから心配になってるのよ、こっちは……。

……明日には私は天界に行くわ。

だからその間、絶対に一人で何かしようとしたら駄目よ?  困ったことがあったらちゃんと皆を頼ってね?」


自分でも自覚があるくらい、芥子は心配なせいで何度も口酸っぱく言葉を重ねる。

それに隣で腰掛けている伽羅はうんざりしてきたのか、はいはいとおざなりに返事をしていた。


どうして夏なのに外で話しているのかというと、それはほんの数分前のあることが理由である。

庭で訓練をしている澄と指導をしている伽羅の二人の為に、芥子は差し入れに冷たいお茶を持って来ていた。そこで暑さにやられたのか、澄から少し離れた木陰で休んでいた伽羅を見つけ、芥子はついつい心配と不安から口が出てしまったのだ。


「自分がばばあなことは理解してるから大丈夫だよ。そんな不安そうにしなくても、芥子が帰って来るまで死ぬ気はないから。

だから安心して交神行ってきなって~」

「勿論すぐ帰ってくるか……」

「伽羅ねーさーん!  だいじょー…あ、芥子姉さ、飲みもの?!  飲みものだ!  ください!  欲しい!」


伽羅の様子を見に来た小走りで木陰にやってきた澄だが、疲れていたのだろう。芥子を一瞬認識するや否や、地面に置かれた二つの竹筒の水筒に目を奪われていた。

きらきらと目を輝かせてちょうだいちょうだいと手を出してくる姿が、どことなく父親である梔子の面影を感じてつい口元に笑みが零れる。伽羅もそう感じたのか、はたまた澄の姿が愛らしかったのか、彼女も自分と同じように笑っていた。


芥子は澄の分の水筒を手に取ると、慌てて飲まないよう注意してから手渡す。


「ふふ、どうぞ。急いで飲むとむせちゃうから、ゆっくり飲むのよ」

「はーい!」

「そのお茶は芥子からの差し入れだよ。喉が潤ったらお礼を言うようにね?」

「ん~!」

「ああこら、飲みながら喋ったら危ないわ」


慌ててそう言うと、澄は水筒を持っていない方の手の親指を勢いよく立てて返事をした。大丈夫だと言いたいのだろうか?

元気いっぱいな返事が面白かったのか、隣でまた笑う伽羅の声が響く。


「あははっ、澄は元気よくて良いね。可愛い可愛い」

「んぐんぐ……ぷはっ、はー美味しい。芥子姉さんお茶ありがとう!

え、伽羅姉さんほんと? 私可愛い?」

「うん、ほんとだよ。芥子もそう思うでしょ?」

「ふふ、そうね。澄は元気いっぱいで可愛いわ」

「えへへ~やった! うれしい」


澄は照れているのか嬉しそうに笑いながらも、訓練の為に上で結っていた髪の毛先を口元に当てて笑みを隠そうとしていた。元々髪が長いからこそ出来る芸当だろう。


あっ、と声をあげて笑っていた澄はそういえばと、芥子に向かって声を掛けてきた。まだ小さいからか、興味の移り変わりがとても早いように感じる。尋ねられながらも、芥子はぼんやりとそう考える。


「ねえ芥子姉さん。姉さんはそろそろ交神にいくんでしょ? もしお母さんに会えたなら、澄はげんきにしてますって伝えてほしいな」

「んん……、出来るなら伝えたいけど……伽羅。交神の為に天界に居る間に、他の神に会うことは可能なの?」

「うーん、その神次第かなあ。あたしは交神中に他の神を紹介されたから会ったけど、梔子は会うことは無かったみたいだし。

確か、延珠兄や荻兄は会うことがあったって言っていた覚えがあるよ」

「そうなのね……」

「へー、そうなんだね」


交神相手次第ならば、伝えることを澄に確約は出来ない。

自分の交神予定の相手を芥子は思い出す。土の神様、五穀豊穣を司る稲荷の神様、稲荷狐次郎様。鬼と化していた彼と戦ったことはあるが、言葉を交わしたことは無い。一体、どんな神なのだろうか。

明日を思うと、期待と不安が入り交じる。


「そっかあ、芥子姉さんがお母さんに会えるかはわからないんだね」

「そうね。でも、もし会えたらその時は伝えるわ」

「うん! おねがいしますっ」

「ふふ、ええ。分かったわ」


小さな新しい家族が可愛くて、自分が幼い頃にされたように頭を撫でると、澄は嬉しそうに笑顔を見せる。そんな自分達を見て伽羅も笑っている。辺りを和やかな空気が包んでいた。


撫でながら、直ぐに考え過ぎるきらいのある芥子は、計らずも考えてしまう。

溌剌とした小さな彼女が、冬には大江山に登るのかも知れない……と。

自分や梔子が使い物にならなくなっていたら、その可能性は大いにあるだろう。それとも戦力的に考えて、神の血がより濃い分強いからこそ、この子が行くのかも知れない。ああでも、冬になったら。


(その頃には伽羅は絶対にいない……もしかしたら梔子も……ああ、駄目よ。いけないわ。これは考えてもどうにもならない)


思考を振り切るように、芥子は撫でる手を止めて無理矢理話題を切り替える。


「さて。澄、休憩もいいけど訓練はどうなの?順調かしら」

「えっとね、的にあてられるようにはなったよ。ね、伽羅姉さん」

「そうそう。ちゃーんと順調だよ。

澄、あたしは大丈夫だから訓練に戻ろうか?喉も潤ったでしょ?」


今は芥子が居てくれるし大丈夫だって~、と軽く言う伽羅に、澄は心配そうな顔色になる。

澄が家に来た時には、伽羅はかつて薙刀を振るう為についていた筋肉は痩せ落ち、食も細くなり最初から弱っていた。年故に内面も落ち着いたのか、優しく穏やかな顔をしていることも増えた。そのせいであの子の中での伽羅は、か弱いおばあさんのような印象になっているのだろう。


「伽羅姉さん本当に? 私が訓練してるうちにたおれたりしない?」

「しないよ。ほら、芥子が居るからさ。もし何かあっても、直ぐにこの子が助けてくれると思うし。だから安心して訓練に戻って?

しっかり訓練しないと、討伐時に困るのは澄だからね」

「そうだけど……芥子姉さん、伽羅姉さんをみててもらっていい?」


いそがしいなら私が頑張って見ながら訓練するから!  と拳を握る澄に、芥子は快く返事をした。交神前の確認も終わり、暇を持て余していた身だ。それくらいお安い御用である。


「いいわよ、私も伽羅が心配だもの」

「そっか、そうだよね。ありがとう芥子姉さん。

それならあんしんだね! じゃあ私は訓練に戻るから! 伽羅姉さん指示があったら合図してね、戻ってくるから!」

「はいはい。大丈夫だから訓練頑張るんだよー」


芥子の返事に安心した澄は、軽やかに訓練へ戻っていった。二人で手を振って見送り、澄が弓を手に取り訓練を再開したのを確認すると、伽羅は不満そうに口を尖らせた。


「もう、澄も芥子も心配し過ぎだって。確かに前より出来ないことは増えたけどさー。

それでもあたしはまだまだ元気だからね?」

「それが虚勢に感じるくらいに弱っていることを、伽羅はもっと自覚なさい。

皆伽羅が大切だから心配なのよ」

「それは有難いんだけどさー……ていうか芥子、澄と比べてあたしへの対応雑じゃない?何かこう、遠慮が無いというか……」

「さあ、気のせいじゃないかしら」


澄がこっちを見ていないことをいいことに、伽羅は胡座をかいて芥子に胡乱気な視線を送る。あの子の教育に悪いからと、彼女の前でこんな姿勢を取らなかったことは評価する。だがそれでも裾が捲れてはしたない。


芥子は槌をしっかりと握りしめることが出来る、女性にしては太めのしっかりとした指に軽く力を込める。そしてあぐらの姿勢を取っている伽羅の膝をぴんと弾いた。


「こらっ、着物がぐちゃぐちゃになるでしょう」

「い゙、‼︎  っった~~……!  

芥子、あたしか弱い女の子だよ?   今のは効いた! 」

「あら可笑しいわね、さっき自分は弱くないって言ってなかったかしら。

またされたくなかったら姿勢を正しなさい」

「それとこれは別なんですー」


ぶうぶう言いつつも伽羅は着物を整え、横座りへと姿勢を変えた。彼女の着物の裾に付いていた土埃に気付き、埃を払って芥子は満足気に頷く。


「うん、綺麗になったわ」

「ありがと、芥子」

「どういたしまして」


言葉を返すと、伽羅は笑顔を見せてから訓練をしている澄へと自然に視線を向けた。それに倣うように、芥子も同じ方向を見る。


澄は真剣な眼差しで、的に向かって弓を引き矢を放っているところだった。

伽羅と二人で、じっと彼女の訓練風景を共に見守る。こうやって沈黙を共有する時間は、とても心地がいい。

……こうやって何気ない時間を伽羅と共に出来るのは、あとどれくらいなのだろうか。


最近はいつも、気が付けば暗いことを考えてしまう。呪われているのだから、別れが早いのは仕方が無いことなのに。

その事実を受け入れることが出来ない己に、芥子はどうしようも無くやるせなさを覚えていた。こんな調子では、年上の伽羅達を見送る際に自分が持つのか気になってしょうがない。


「……ねえ、伽羅」

「んー?」


こちらを見ずに空返事をする伽羅に、芥子は同じように顔を向けずに返事を返す。


自分が悩みやすいのは、そういう性質だからだ。きっと己は、一生何かしらの不安から悩んで生きるのだろう。

だから、その不安や悩みを減らせるように、この性質のせいで周りに迷惑を掛けないように。


まずは目の前の憂いを払う努力をするのだ。例え根本的な解決が無理だとしても。


「稲荷ノ狐次郎様にお願いして、出来るだけ早く帰ってくるわ」

「……うん」

「彼がどんな神様かは分からないし、蔑ろにしているのかと怒りを買うかも知れない。

それでも私は、早く帰ってくる」

「うん」

「もちろん、なるべく穏便にいくように努めるわ。もしもの時も神の怒りが一族に向かないよう、そこだけは絶対に上手くやるわ。何を賭してでも、そこだけは必ずやってみせる」

「うん」


お互いに視線は合わせない。

合わせたらきっと、己はこの数ヶ月の間の彼女を見る内に膨らみ続けた不安から、情けない姿を晒すことになるだろう。

伽羅がそんな己に気付いて、それでこちらを向かないのかは分からない。分かった上でしているのかも、分からない。


だが淡々と、だけど優しく返事をしてくれる対応が、今はとても有難かった。


「呪いを受けていても、いなくても。

いつ死ぬかなんて人間にはどうしようも無いわ。天命だもの」

「……うん」

「それでも、それでもよ。

…………お願い、私が帰って来るまで、死なないで。死んじゃ嫌よ」


声が震えているのが分かる。行き場のない衝動を覚え、膝に置いている手に力が籠るのが分かる。

無理を言っていることは重々承知の上だ。こんなのはただの駄々だ。それでも、伽羅なら叶えてくれる気がする。そんな根拠の無い期待を、少しでも抱いてしまう己が忌々しい。


(伽羅ならどうにかしてくれる。伽羅の指示通り、私達は片羽のお業を倒すことが出来た、弱っているのに初陣の子がいるのに伽羅達は九尾吊りお紺を倒してみせた。

そんな伽羅だから、無理だと思ったことを叶えてきた彼女なら、また叶えてくれるって……)


口を噤み下を向きそうになっていると、そっと伽羅が膝に置いている芥子の手を握る。


「え……」

「ねえ芥子」


驚いて顔をあげると、伽羅はいつの間にか自分を見ていた。再確認するように握られた手を見て顔をあげると、慈しむような優しい顔をしている伽羅と目が合う。


「絶対、は言えないけど、あたしだって早死にはしたくない。だから足掻くだけ足掻いてみる。けど、あたしも所詮ただの人間だからさ。……駄目な時は駄目だと思う。

それでもいいならさ、約束しよっか」

「約束……?」

「そ、やーくそーく」


握っていた手を離し、伽羅は小指を芥子に向けた。約束……、とただ言葉を繰り返す返すだけの自分に、彼女はどんな約束なのか述べていく。


「芥子が戻るまで、あたしはあたしなりに足掻いて生きて待つ……っていう約束。どう?

あたしによるあたしの為のあたしが最後に開催する長生き出来るかなチャレンジ、それを見届ける役目を、芥子に授けてしんぜよう〜〜〜」


まるで寓話に出てくる神のように、伽羅は両手を広げて膝立ちになり、仰々しく己に言葉を授けた。言い終わると、彼女どうだと言いたそうな悪戯っぽい表情になり、笑いかけながら楽な体勢へと姿勢を変えた。


そんな、昔よくしていた馬鹿みたいなことをまたする彼女が、かつてのようにころころ表情を変える彼女が、何故だか可笑しくて。嬉しくて。……寂しくて。こんなやり取りがいつまで出来るのだろう、とまた後ろ向きなことを思ってしまって。

強引にその考えを振り払う為に、芥子は態とらしく大きく笑い出した。


「ふっ....ふふ、あははっ! もう、伽羅。貴女、何の……ふふっ、何の真似なの、それ……っ!」

「え、さっきのそんなに面白かった?もう一回やった方がいい?」

「ふふ、やめてちょうだい、馬鹿らしすぎる……あはは!」


わざとでも笑い続けていたら、案外本当に可笑しくなってくるもののようで。またするべきかどうか思案顔の伽羅の隣で、芥子は目尻に涙をためていた。


「ふふふっ、はー………はあ、お腹が痛い。やっと治った。ああ、大変だったわ」

「そんなに面白かったのなら上々だよ。ちょっと笑いすぎな気もするけど」

「ふふ、そうね。

伽羅。その約束、交わしましょう」


芥子は伽羅に向かって小指を差し出す。それを見て伽羅も再び同じように小指を向けると、芥子の小指と絡めた。


「いやあ、このまま流されて無かったことにされると思ってたよ」

「そんなことしないわ。でも、約束の内容を一つだけ付け加えてもいいかしら?」

「ん?いいよ、なに?」


首を傾げてこちらをみる伽羅に、芥子は必ずしも叶える為、宣誓の代わりに約束を一つ付け足した。


「伽羅は私が帰ってくるまで頑張って命を繋ぐ。それだけだと、約束なのに伽羅だけ果たす為に頑張ることになるでしょう?

だから私もしないと、釣り合いが取れないわ。私は伽羅に会う為に頑張って早く帰ってくる、これを付け加えさせて」


真剣に言ったその言葉を聞いて、伽羅は何故だかため息をついた。芥子は自分の発言のどこにため息をつく要因があるのか分からず、不思議そうに目を瞬かせる。


「え? 伽羅、何か可笑しかったかしら」

「いいや、可笑しくなんかないよ。ただ単に、芥子はやっぱり芥子だな〜って思っただけ」

「……?どういうこと?」

「相変わらずあんたは真面目で可愛い妹だなってこと。まあ気にしないで。

それよりほら、ゆーびきーりげーんまーん」

「え、あ、うそついたら……!」


握った小指を揺らしながら、伽羅は不思議そうにしている芥子を流して指切りの言葉を連ねる。慌てて途中から芥子も同じように指切りの言葉を言っていく。そして最後の言葉を言うと同時に、互いの小指を離した。


「「針千本のーます、ゆびきーった!」」

「さーて、これで約束されたんだ。果たす為にあたしはー……そうだ、まずは漢方を毎日ちゃんと飲むのことを頑張ろうかなー」

「それなら私は……そうね、出来るだけ向こうの迷惑にならない程度で、なるべく早く明日は交神に向かいましょう」

「お、いいね。

芥子、お互いに頑張ろうね」

「ええ、勿論よ」

「でもまあ、無理な時は無理だからその時はごめんね!」

「あっさり言わないでよ、もう……」


軽く笑う伽羅に対して、芥子は天を仰いだ。

いつまで続くことが出来るのかは分からない。それでもせめて今、このひと時ひと時を大事にしよう。それが多分、悲しく思い続けるよりも、きっとマシだから。

 

 

1021年 8月 選考試合

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ありがとうイツ花さん。

今月からは樒が当主として皆を引っ張って行きます。伽羅とはまた違う色の当主になるのか、ちょっとワクワクしますね

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四代目……何度かクリアしたことがある私からしたらまだまだ先は遠く感じますが、樒達からしたらきっと考えていることは違うんだろうなあ
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芥子「よろしくね、樒」

樒「ああ」

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選考試合……樒は行くだろうな。

彼は色々考えてそうなタイプそうだから、周囲やお上へに当主が変わったことを示す為にちゃんと行きそう。

そういうわけで、今月は選考試合に行ってきます!
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伽羅の最後のお仕事、どうだ!?
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じゃん。

かなり上がってる!  小話的には最後の方は恒春や山茶花が見ていたのもあって、澄は色んな人の要素を得ていそうですね
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ついに討伐隊入り! 澄に何かコメントはあるかな?
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イツ花さんの嬉しいお言葉。

澄ちゃん素直な子だから、こう言われたらめちゃくちゃ張り切ってそうですねー

 

澄「うん!  頑張ります!」

梔子「いい返事だなあ、えらいえらい」

澄「ふっふふー」

樒(面白いくらい素直だな….)

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今回の選考試合メンバーはこちら。

若手の樒と澄は今後の為にも育って欲しいので投入。安定した攻撃力が欲しいのと親子出陣をしたい為に梔子も。先月交神をしましたし、暫くの間はお子の訓練で出陣出来なくなりそうなので芥子もメンバーへ。

この4人で行きたいと思います!

それにしても赤髪増えたなー
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毎度の如く戦勝点に飢えているので、選考試合の時のみ特別にあっさりへ。5流だと戦勝点管理が大変ですね….
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3世代末っ子組の恒春と山茶花の二人に家を任せて、樒達は出陣です!

 

山茶花「みんないってらっしゃい、気をつけてね」

恒春「朗報待ってるからね」
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樒「……ああ」

樒、最初は初代の名前で呼ばれることに慣れなくてタイムラグを起こしてそう。

 

それでは選考試合へ!
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今回は夏の選考試合。なんやかんや2連続で現在出場している百鬼一族です

春は……どうしよう、大江山次第ですね
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一回戦は同士舎拳闘会。

確か拳法家オンリーのチームだった筈。拳法家は回避率が高めなので、一本勝ち出来るか不安です
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初手は梔子。何だろう、この取り敢えず誰かしらに射ればいいだろ感は……?

討伐時はもう少し術とか混ぜて進言してなかったっけ君?  様子見してるの?
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剛鉄弓強い。ワンヒットキル
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お次は樒。

受け継いだ闇の光刃の威力はなかなか!流石は火の申し子(父神は風属性)

しかし甲には回避されてしまいました。これはまだ新しい愛薙刀に慣れていなくて失敗したのかな

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それでも勝ちは勝ちです!まずは一勝!
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!!?  選考試合は戦勝点が美味しいなと考えていたらまさかの!
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双光樒斬!百鬼家初奥義きた!

樒達の代で誰かしら奥義を覚えそうだなと何となくは思っていましたが、まさかもう覚えるとは….

基本ゆるゆるプレイのせいで、そろそろ覚えそうだったとは認識していませんでした←

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成長期な樒達だけでなく、芥子もいい感じに伸びていますね。技土は死んでいますが壊し屋は確か技が伸びにくいらしいですし、そう考えたら他の技の伸びはいい感じな気がします

 

心の伸びを見るに、樒は火と風の伸びが良いのでこれからもっとゴーイングマイウェイになっていくのかな。今もう既に我が道を進んでいる傾向はある気はしますが。

芥子は心水と土の伸びが良いですね、どんどん優しくてしっかり者な子になっていきそう。

澄も現時点での心の伸び方は芥子に似ていますね。しかし心土と心火が僅差ですし、澄は更に元気のいい子になっていきそうで楽しみです

 

余談な個人的な考えですが、心火が高いと熱い心の持ち主か意思が強い性格に、心風が高いとマイペースだったり独自の価値観が強い性格になるイメージがあるんですよね。ちなみに水が高いと心優しい性格や穏やか、気配り上手なイメージが。土が高いとしっかり者や落ち着いた性格、意志が堅い….そんなイメージです

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話を戻して二回戦へ

お次は三十三間会です。多分元ネタが三十三間堂ですね
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初手を取ることに地味に定評がある梔子からのスタート。

さっきの戦いと違って物理攻撃&術攻撃&デバフとは、梔子これは一体……?

何で今回はヤル気があるの。さては同職業だから娘に「澄!  同じ弓使いでも一味違うところをお父さん見せてやるからな!」….と言って張り切っているんですねきっと。澄は素直そうだからキラキラした目でその活躍をみていそうです。

ダメージのスクショが有りませんが通常攻撃で乙を倒しました。確か350は出していたかとf:id:kalino_suke:20190517035655j:image

二番手は芥子。

壊し屋らしく通常攻撃&防御防御の進言。性格的に防御進言が多いのが芥子らしい気がする、慎重派な感じがします。

ここは一発どかんと三十三間会甲を沈めて貰います
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312!甲も倒れました!

無属性でこれだけダメージを出せるのなら、相性バッチリの岩清水ノ槌だとどれくらいでるんでしょうね….早く落ちてくれないかな
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澄ちゃん初ターン!

し、進言がお父さんそっくり!!(やる気がある時の)

梔子を見てこんな感じで進言すればいいのかなーってしたでしょ澄ちゃん。周りにバレバレだよ絶対。

取り敢えず今通常攻撃でどれくらいの威力が出るか知りたいので射って貰います

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まだ初陣ですししょっぱい!

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フォローするかの如く次ターンで決める男。

 

樒「……」(初陣にしては緊張せずよくやれてるんじゃないか?  比べる相手を俺しか知らないから、実質どうかは言えないが)

澄「……もーーーー!  しーちゃん文句があるならハッキリ言って! 何なんなの文句があるなら相手になるよ‼︎  

無言で見つめるのやめて‼︎」

梔子「どーどー澄、落ち着けー」

芥子「樒、何も言わないで見つめられたら人は不安になるのよ?  せめて喋るか見つめるのをやめましょう?」

樒「ああ、悪い。つい」

澄「ついじゃないし‼︎  ついじゃないし‼︎」

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審判が勝利を告げている間も澄ちゃんは樒をみて悔しそうな顔をしていそう……樒は涼しい顔してそうですが。

そしてそれを微笑ましく&ハラハラ見守る保護者二人。

樒は小話の様に心中はそこそこ喋っていますが、それを言葉に出す気が基本ありません。必要最低は一応喋っているので、それでいいと思っている男です
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今度は樒達と梔子がレベルアップ!

梔子は現在1歳5ヶ月。来月から色々と恐ろしいですがこの調子ならまだ大丈夫かな?
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続いて準決勝。この勢いで決勝までサクサク進もうと思います!
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ワンターンフォーキルゥ…
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薙刀士の列攻撃が便利過ぎて初陣の澄ちゃんがまだ1ターンしか行動してない….

これは絶対に樒を凄い目で見てるな。でも樒は何も思わずに別のことを考えていそう

 

澄「じー……」(一撃で倒したのは凄いし初隊長として頑張ってると思うけど、思うけど‼︎  モヤっとする‼︎  ちょっとは‼︎  残して‼︎  欲しかった‼︎)

樒「……」(当たり前だが、夏だから日差しが強い……三人が倒れないように、ちゃんと気を配って見ていよう)

梔子「いやー本当にアイツら見ていて飽きねぇな。あんな熱視線に気付かねぇとか樒は面白いなあw」

芥子「私からしたら貴方と伽羅とまた違った意味で心配になるわ……大丈夫かしらあの子達」f:id:kalino_suke:20190517035618j:image

そんな会話をしていたらついに決勝戦。これはスクショするのが早すぎた帝です
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初手は挨拶がわりにたまには術を。輪ノ火!
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大将には回避されましたが一人撃破
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しかし次手を相手に奪われ芥子が眠ってしまいました……。 
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回復しようか迷いましたが、このままでもイケると判断した為樒も術を。

プレイ記を書いている今だと、もっとこうした方が良かったのでは?  と思うことが出てきて当時の自分に凄く問いただしたくなります。本当に。
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雷電いきます!大将は拳法家ですし相手が上手く避けてくれれば澄ちゃんまでターンが回る!樒も大将には当てないようにしてくれ! (滅茶苦茶な発言)    
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凄く無茶な発言を実現してくれるとかヤバい….凄い……

残るは大将のみです
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あっこの進言……

もしや澄はお膳たてされたと感じてやる気を無くした……?  

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澄「しーちゃん‼︎  そーゆーのっ‼︎  私はっ‼︎  いらないからーーー‼︎」(全力の通常攻撃)

 

レベルアップしたと言う理由以外にも、怒りから威力が上がった様に感じますね……

ちなみに2回戦ではこうでした

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だいぶ威力が上がりましたね。試合終了後、樒にああいうのはしなくていい!と言いに行く澄が目に浮かびます。

 

そんなやり取りをしながら、決勝戦は終了です。

試合が終わって梔子に起こされた芥子が眠りから覚めて最初に見る光景は、何故かまた怒っている澄と流石に悪そうにしている樒……その二人が目に映るでしょうね。今度は何があったんだと
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芥子の水の上がりが凄い……壊し屋でここまで技が上がるとは。

澄は心風以外の上りはバランスが良いですね。その上りを技にも出して欲しい……
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祝!優勝です。おめでとう!

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帝、報奨金ありがとう
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まだ賞品は茶器や装飾ばかりなので、適当に茶器を5つ貰いました。

吉報も出来たことですし、帰還しましょう
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帝の前でわちゃわちゃしてたけど信任厚くなったの?

懐広いな帝……

 

今回はここまでです。